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実は、ミュージカル・ファンなのです

 授業で「レ・ミゼラブル」を扱おうと思い、ビデオ(レ・ミゼラブル10周年記念コンサート)を使うことにした。久しぶりで再生して感動が蘇った。この作品を見る前正直「あの哲学的文学をミュージカルにして成功するわけがない」と思っていた。ジャン=ギャバン主演の映画でも今一歩だったからだ。しかし違った。嫁さんに連れられて見た舞台は、感動と驚きの連続であった。むしろ原作を読んだが故の感動があった。思わず大枚はたいて(9500円)帰りにビデオを買ったのである。

 そもそも高校2年生の夏に、「サウンド・オブ・ミュージック」を映画館で見るまでは、ミュージカルに対する私の偏見はひどかった。歌って踊ってお気楽なものだろう、と思っていた。レビューに近い感覚だったのである。しかし、友人に誘われて半ばいやいや入った映画館で冒頭のアルプスの風景が写った瞬間、完全に画面の中に入り込んでしまい、休憩を含めて約3時間はあっという間に過ぎ去ってしまったのである。その日から、私はジュリー・アンドリュースファンになり、ミュージカルファンになり、映画ファンになったのである。「百聞は一見に如かず」を地でいく話であった。その後も、「サウンド・オブ・ミュージック」の歌を英語で覚えたり、「マイフェアレディ」の台本を覚えたりしたものである(マイフェアレディのロンドンキャスト版のLPは今も大切に持っている)。さらに名作映画にも没頭し、そこから外国文学の読書にもつながった。

 それからはむさぼるようにミュージカルを見た。お金のない当時、映画が中心であったが、東京の出始めたばかりのタウン誌で、場末の映画館や自主上映で上映している所を見つけては通ったものである。

 また、「雨に唄えば」「パリのアメリカ人」「バンドワゴン」「五つの銅貨」「回転木馬」「オクラホマ」「南太平洋」「王様と私」「ウエストサイド物語」「マイフェアレディ」「ファニーガール」「オリバー!」「キャバレー」「エビータ」などはビデオも購入した。舞台も「マイフェアレディ」「屋根の上のバイオリン弾き」「ラ・マンチャの男」「レ・ミゼラブル」「キャッツ」「アニー」などをみにいった。

 ミュージカルというのは、現実の世の中や原作から何かを省略することで生じた矛盾を、歌と踊りをいれることで不自然でないものに再構築したものだ。「レ・ミゼラブル」も原作に忠実に映画を作ることは難しいが、ストーリーを思い切って省略し、原作では軽い扱いのエポニーヌをクローズアップするなどの付け加えを行い、感情を歌にのせることでストーリーを再構築することに成功したのだ。やはり、歌や音楽は軽いテーマから重いテーマまで見る人に納得させる力を持っているのだと思う。

 生徒に見せた「レ・ミゼラブル」は抜粋ではあるが感銘を与えたようだ。英語や音楽・文学など他の世界への興味関心へとつなげて人生を彩りある物にするきっかけとして欲しいものだ。

 本当の感動の少ない現代。本物にふれる時間を大切にしなければと思う。

 

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