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橋下はいらない

いわゆる「大阪都構想」の是非を問う住民投票が否決の結果で終了した。
私は素直によかったと思う。
以前も少し書いたが、複数の区割り案がでていて一長一短あるから「もう少し慎重に検討したい」という声があったものを「これで行く」と押し切ったのが今回の原案。当初から多くの矛盾点が指摘されており、今回の反対派はそれを指摘するだけで反対運動になったのだ。賛成派はそうした指摘を隠し打消しながら、最終的には「大阪都体制ができなければ、大阪は終わりですよ」と感情的に訴えるしかなかった。あれが通っていたら大阪はむちゃくちゃになっていたのではないかと思う。

最近、橋下という人がどういう人なのか、ようやくわかってきた。

①戦いが好きなだけの人

おそらく彼は、心底大阪をよくしようなどと思っていない。そして大阪をよくする唯一の手段が「大阪都構想」だとも思っていなかった。もし思っていれば、あんなにサバサバ敗戦の弁を述べられるはずもない。彼の説によれば「大阪都構想が否決されれば大阪は終わり」のはず。「いやー叩き潰されました」なんて気楽に言っているのは、ゲームの勝敗程度にしか考えていなかったからだろう。政治も法律も彼にとっては自身の戦いのステージと武器でしかない。だから解釈も無茶苦茶。そして今「自公の提案ている総合区について検討したい」と言っている。街頭演説で「野党は対案も出さないんですよ」と言っていたのはうそだったのだ。そういう人なのだ。

②民主主義をまったく理解していない人

民主主義は、「選挙で多数を取ったら何をしてもよい」という制度ではない。多数決そのものは単なる手段であって民主主義そのものではないのだ。よく多くの利害関係者の意見と主義主張に耳を傾け、限られた社会資源をできるだけ多くの人に配分できるよう調整するのが民主主義。しかし、最終的には何かを決定しなければならず、それを決するのが多数決である。そこで多数を得たとしても少数意見に耳を傾けなければならない、ということは小学校でも教えている。
 「野党議員は一部の市民しか代表していない」「今、大阪に必要なのは独裁」
 まったくわかっていない。

③民間活力をとことん嫌う人

他地域と比べて大阪のすごいところの一つに、民間活力がある。自前で切り開く文化。全国、全世界に誇る素晴らしい制度が民間発で作られてきた。
 橋下はそれをつぎつぎに潰していった。例をあげよう。

○子どもの家
20数年前、市内のあちこちで、普通のおばあちゃんたちが、自分の家で、子どもたち、高齢者、障がい者、シングルマザーさんなど、居場所のない人たちを、無料で、年齢制限も時間制限もない居場所づくりを始めた。これを「子どもの家」という。
大阪市では「これは有益な取り組みだ」ということで1989年に事業化され、補助金が出たり、市が管理する施設を提供するようになった。
それを2013年、「来年の3月31日で廃止にする、大阪市の施設でやってるところは、出て行け」と橋下が言い出した。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2014
それを境に嫌がらせの電話や、インターネットのいやがらせの書き込みが急増。そこに通う子どもたちへ、心ない罵声を飛ばされた。かくして全廃されてしまった。

○救護施設 今池平和寮(日本ヘレン・ケラー財団)
平成2年に高齢単身の生活困難の人々が利用する救護施設としてスタートしたこの施設。大阪市が「
それはいい仕組みです」と、市立今池生活館の跡地施設を提供することで現地にできた。25年間で100人を超える自立支援者を生み出した。ところが2013年、大阪市は急に来年の3月31日ででていけ、といいだした。理由は耐震問題。それなら代替施設を提供するのが筋道を通す態度のはず。しかし、一切なし。ついに平成27年3月、閉所となった。

http://www.helenkeller.jp/publics/index/208/&anchor_link=page208#page208

○大阪人権博物館 リバティ大阪
西浜の地域の人たちの土地提供によって設立されたリバティ大阪。まず橋下は展示内容にいちゃもんをつけた。「部落差別の内容が多すぎる」と。博物館側はさまざまな人権問題を広く扱う展示変更を実施したが、2013年大阪府市は補助金1億2千万円を廃止。さらに大阪市は土地の賃借料年2700万円を要求してきました。もう驚くしかない。
http://www.liberty.or.jp/member/

○大阪府立国際児童文学館
児童文学者鳥越信氏の膨大なコレクションを、滋賀県とのし烈な誘致合戦を勝ち抜いてもらい受け、1984年に大阪府が設立した、世界に誇る文学館。以後、年間2万点の児童書が無償で提供され、研究もすすんでいた。2008年、橋下はこれを突然中央図書館に移設するといいだし実施した。鳥越氏をはじめとする寄贈者から蔵書・資料の返還請求があったが無視。

④効率だけが基準の文化否定の人

「文化」というものは人の心を潤すもの。それだけで存在価値がある、と私は思っている。「市場の失敗」という言葉があるが、市場が非効率で手が出せない分野を担うのが行政の意義の一つであることを思えば、文化への投資は間違いなく行政の仕事である。
文楽、大阪センチュリー交響楽団への補助金打ち切り。大阪市音楽団の廃止と楽団員の解雇。彼は文化をも効率という尺度でしか測れない。


彼が本当にやめるのかどうか知らない。

ベーコンは物事の正確な把握を邪魔する偏見をイドラと呼んだ。四つのイドラのうち「劇場のイドラ」というのがある。「思想家たちの舞台の上のドラマに眩惑され、事実を見誤ってしまうこと」つまり政治家やコメンテーター、思想家などの発言を無批判に受け入れること、である。劇場では、観客が演技者の演技を楽しむ。演劇で表現されているものが事実でないことは、だれもが知っている。その上でいい意味で騙されに行くのが劇場である。

「橋下劇場」という言葉があるが、それは橋下氏のことというよりは橋下氏のことを「面白い」「次は何をするのか」と眺めている市民の側の状態を言い表した言葉ではないだろうか。
劇場のイドラを払拭し、真実を見つめねばなるまい。

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コメント

確かに橋下さんには欠点が山ほどあり、yossyさんの指摘していることも分かります。補助金カットと都構想で山ほど敵を作ってきた。橋下さんのやり方にも疑問を持つ人も増えたし、途中で投げ出すようにも見える(てか、投げ出した)。

私は都構想に賛成も反対もしない立場ですが、改革しようとする意思は誰にも負けないモノを持ってたと思います。仮に今回の選挙を勝利したとて都構想が橋下の思うように走り出したとして、多分構想以下の成功しかしなかったと思うし、完全に失敗の可能性だってあった。でもやはり熱意は認めたい。

大阪の財政は現状維持で許されないとこまできてます。役所の腐敗は日本一レベル。そんな大阪をなんとかしようとする政治家が結局何も出来なかった。民主主義の壁と言うか、年代壁、これに負けた。65歳以上の壁。大阪に限らずこれから年金改革などで65歳以上の壁に日本は苦しむことになると思った選挙でした。

投稿: junk | 2015年6月 2日 (火) 23時15分

junkさん、コメントありがとうございます。
>私は都構想に賛成も反対もしない立場ですが、改革しようとする意思は誰にも負けないモノを持ってたと思います。
私も当初そう思っていて期待もしていたのですが、どんどん不信感が増幅してきました。大阪の二重行政の例として府立体育館と市立体育館、府立図書館と市立図書館、府立大学と市立大学をあげた段階で、もうこれはだめだな、と思いました(政令指定都市だけの問題でないどころか、二重行政の例としてふさわしくありません)。今はとにかくゲーム感覚で政治の世界泳いできただけの人に思っています。
改革は当然大切です。

投稿: yossy | 2015年6月21日 (日) 18時14分

沙耶華さん、内容と関係ないコメントをされても困ります。ご自身の研究はご自身のプログ等を立ち上げて表明してください。
しばらくのちに削除します。

投稿: yossy | 2015年7月20日 (月) 13時22分

ここにきて橋本さんにガッカリさせられてます。国政に進出するのに「大阪維新の会」って何なの?大阪に改革が必要なのは分かりますが、国政政党のプライオリティが大阪ってなんでやねん!一つのことにこだわってる政党って存在意義があるんですかね?

すいません愚痴になりました。

投稿: junk | 2015年11月17日 (火) 22時21分

junkさん、コメントありがとうございます。
私はすでに冷めておりました。
どうせまた政界に復活するか、おおさか維新の党首級としての立場を利用して発言し続けるのでしょう。困ったものです。

投稿: yossy | 2015年11月18日 (水) 19時24分

忘れかけた頃のコメントを失礼します。
今頃では、国政政党としては大阪維新の大阪の名前は不要論がでてますね。
あの頃は大阪と付けるから意義があるとか叫んでましたね。
そんなことも忘れられ…
人というのはほんとうに無常ですね。

投稿: てぺさん | 2016年8月12日 (金) 12時47分

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