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軽減税率に関する報道への違和感3

3回目である。二つのことに触れてみる。

○軽減税率で徴収されない税(約1兆円)の一部を使って低所得者に給付した方が効率的

いわゆる「給付付き税額控除」である。

いったん高率の税を支払う必要があることから、痛税感を和らげる効果は薄い。
所得の把捉と線引きが難しい。
不正受給の防ぎ方が難しい。

などが言われてはいるものの、一考を要する考え方である。

マイナンバーカードを使っての方法を財務省が提案したが、公明党から一蹴された経緯は記憶に新しい。

ただし、一つ疑問がある。一定以下の所得の方に給付を行うという考え方は、定額給付金などで行ってきた経緯があるが、その時マスコミはこぞって「バラマキだ」と批判したのではなかったのか?
多くのコメンテーターに言いたい。
軽減税率にケチをつけ、給付方式を主張するなら、その前にその前歴を総括するべきである。

○「どうせ選挙目当て」という批判について

コメンテーターにとって、こういっておけばとりあえず恰好がつく、という投げセリフ。何も調べなくても、考えなくても、その場限りのええかっこしいができるセリフ。
それが「どうせ選挙目当てでしょ」「あれはバラマキ」
大っ嫌いなセリフである。

国民に受けのいい政策には「選挙目当て」、国民に負担を強いる政策には「庶民の気持ちが分かってない」とりあえずこれを言っておけばニュースバラエティは形が作れるのだ。

問題は政策の中身である。「選挙目当て」という批判を怖がっていては、国民に寄り添った政策を提案できないことになるではないか。
実に愚かなセリフである。

以上3回にわたって、軽減税率に関わるマスコミ報道への違和感を述べてきた。
要は財務省とマスコミが歩調を合わせる姿に違和感を感じるのだ。普段は偉そうに政権批判をしゃべっているコメンテーターも、財務省のお墨付きをもらって安心して批判できるのだろう。
「マスコミは自分の意見を言うよりも、国民に議論の材料をすべて提供せよ。」
今回も深くそう感じる。
 

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軽減税率に関わる報道への違和感 2

前回の続きである。軽減税率に関する報道のどこに私が違和感を感じているのか。

二つ目に、軽減税率を導入する財源がない、というものである。

当たり前のことであるが、まだ消費税は10%になっていない。現在8%で運営されているのだ。軽減税率とは「消費税10%時に食料品を8%据え置く」ということであって「食料品以外の税率を10%にあげる」ということである。
つまり、新たな財源が生まれるという話であって本来財源がなくなるという話ではない。表現の仕方が明らかにオカシイ。
そもそもこんな話が出てくるということは、与党が先の衆議院選挙で公約した軽減税率の導入を無視するつもりで、財務省は予算を考えていた、ということである。国民もバカにされたものである。なのに、なんだか丸め込まれて、軽減税率に反対する人が増えているという。だまされやすいにもほどがある。

普段官僚政治を批判しているマスコミが、なぜか今回は選挙公約を実現しようとしている政党を批判している。やはり「マスコミの裏に財務省あり」と見えてしかたがない。

そもそもなぜ「消費税が足りなくなれば社会保障費を削らざるを得ない」のか。消費増税分を社会保障の充実に充てることは確認されているが、社会保障費の財源は消費税だけではない。

これは脅迫に等しい発言ではなかったのか?

なぜ「防衛費を削らざるを得ない」「公共事業費を削らざるを得ない」ではないのか?
いやなぜ「歳出全体のあり方を見直さざるを得ない」ではないのか?

財務省がそういわないのはまだ理解できるが、マスコミがそういわないのは何故なのか?

軽減税率に関わる報道への違和感

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軽減税率に関わる報道への違和感

軽減税率の導入が世間を賑わせている。

「消費税には低所得者ほど納税率が高くなる逆進性がある。せめて生きていくのに最低必要な食料品の税率を抑えることで、低額所得者の痛税感逆進性を緩和する」
私は基本的に賛成である。

いままでも、財務省が政治家に抵抗する場面になると、なにか違和感のある報道に接することがあった。
今回、政治家が政権公約を実現しようとしたら、自民党税調と財務省が待ったをかけて、それをマスコミが応援している。
違和感を感じない訳にはいかない。

まずは、「軽減税率を導入すると高額所得者のほうが減税額が大きくなる」という批判に対してである。


これは数字のマジックそのものである。ここでは「率」と「額」がすり替えられている。
そもそも、消費税は、税率が上がると低所得者層の負担税が上がる傾向がある(逆進性がある。消費税そのものに反対する人がもっとも強調する点)一方で、高額所得者層のほうがより多くの税を負担することになる、という税なのである。
 逆に言うと
「税をさげれば逆進性は緩和するが、高額を収めていた高額所得者の税がより減る」という特徴をもともと持っている税なのである。
 

 例で見てみよう。

Photo

これが逆進性の説明。低額所得者のほうが5ポイント高い税率で納税していることになる。しかし、高額納税者の方が多い額を納税している。

さて、今かりに消費税を8%に下げてみると、どうなるだろう。

Photo_2

2000万円の所得の方は20万円減額、200万円の所得の方は4万円の減額となる一方、税率ぱ4ポイント差となり逆進性は緩和されている。
これは消費税を廃止する時にも同じことが言える。共産党に「高額所得者のほうが多く減額されるから消費税廃止に反対だ」といったらどうだろうか?  それはオカシイというだろう。しかし共産党は軽減税率の導入に「高額所得者のほうが減税額が大きくなる」といっている。矛盾した話である。

さて、食料品のみ税率を8%に据え置いた場合を具体的に見てみよう。
家計に占める食料品支出の割合は、低額所得者の方が高額所得者よりも高い。総務省の2014年度家計調査によると、平均的な食料品支出割合は24.0%なので、今かりに、低額所得者の食料品支出割合を30%、高額所得者の食料品支出割合を20%としてみた。
Photo_3
一律10%の場合と比べると、
   高額所得者 4万      円の減額(0.2%の減率)
   低額所得者 1万2千円の減額(0.6%の減率)
確かに高額所得者の方が減は大きいが、減は低額所得者の方が大きい。つまり、逆進性は緩和されている。それも、食料品で緩和されている、という点が重要なのである。

軽減税率を額で論じるなら、金持ちにとっての4万円と庶民にとっての1万2千円はどちらに重みがあるか、ということを論じるべきなのである。庶民の痛税感を和らげる、というのにそういう議論がまったく抜け落ちているのはどういうことなのだろうか。

こんなに当たり前のことを、数値をすり替えて批判するテレビのコメンテーター、新聞記者には庶民感覚のかけらもないのではないだろうか。
私はこういう報道に「役人感覚」を感じるのだ。裏に財務省がいると考えているのはそういう感覚の問題でもある。

続き 軽減税率に関わる報道への違和感2

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