進学校と困難校と
私はこれまでの教員生活の中で、いわゆる困難校の勤務が長かった。家庭に問題を抱えている生徒、精神面で不安定な生徒、問題行動を繰り返す生徒など様々な生徒と関わってきたが、近年生徒が学校の中で自己実現しようとしないという傾向性を感じてきた。携帯電話のせいだけではあるまい。とにかくアルバイトをしたがる。クラブも勉強も二の次である。学校行事も自分たちで作ろうとはしない。「楽しませてくれよ」という姿勢だから「面白くない」という理由だけで、クラス取り組みにも参加しようとしない。そんな生徒が増えていることを感じていた。
ところが数年前からいわゆる進学校に赴任し驚いた。始業式の静かさ、授業の集中度など違いはたくさんあるが、なんといっても学校の中で楽しむすべを彼らは知っているのである。クラブの取り組みの真剣さだけでなく、学園祭の盛り上がり、修学旅行のバスの中の盛り上がも完全に困難校の上である。「こいつら得なやつらやな」といつも思う。同じ学費を払って楽しみ方が違うのだから。
しかしそれでもいくつかの点で進学校に不満がある。その一つは、生徒の傲慢さである。自分は勉強ができると思っているから、教師をなめてかかっている生徒がいるのだ。質問も謙虚ではなく、けんかを売っているのかと思うような言い方をする。「おまえ口の訊き方に注意せい!」と叱ることたびたび。
2つ目には叱られなれていないのである。優秀だったのだろう。叱られていない。叱るとすぐにすねる。反省する前に恨む。自分の前に「不満足な状況=ストレス」が立ちはだかることになれていないのである。学校行事で起こった誰の責任でもないハプニングにクラス全員で「謝って下さい」と迫ってきたことがあった。何を言いたいのかしばらく理解するのに時間がかかった。彼らはハプニングを自分たちで消化できず、教師に責任転嫁することで解消しようとしていたのだ。最近、有名大学の学生が、母親や塾の生徒や友人を殺す事件が報道されているが、なんだか分からないでもない。誰かのせいにする。ようは精神的に弱いのだ。
困難校の方が、生徒との人間関係は結びやすかった。叱ってこづいて追いかけて、深く関われば関わるだけ何でも相談に乗れた。それもまた進学校にはない楽しさであった。
来年、転勤希望をどうしようか悩んでいる。
もう一度原点の困難校へ戻るべきか。今のままでもう少し勝負するべきか。
どちらが前向きなのかな。
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